優秀な台湾映画を表彰する「台北映画奨」(台北電影節)の第18回授賞式が7月16日、台北市の中山堂で開かれた。同賞は、台湾の身分証または居留証(ARC)を持つ監督が製作した作品を対象としており、アニメーション、短編、ドキュメンタリー、長編フィクションの4部門が設けられる。今年の応募総数は過去最高の計302作品。各部門ごとに10作品ずつがノミネートされ、賞を争った。
◇グランプリに「只要我長大」 最多5冠獲得
最高賞のグランプリ(百万首奨)に選ばれたのは、3人の男の子を中心に台湾原住民(先住民)集落の生活、社会的問題などを軽やかに描いた長編フィクション「只要我長大」。同賞は各部門の最優秀作品4本の中から選ばれる。また、同作品は長編フィクション賞、監督賞、新人賞、編集賞も受賞。今回の最多受賞作品となった。
メガホンを取ったのはタイヤル族出身のチェン・ジエヤオ(陳潔瑤)監督。今作が長編第2作目となる。チェン監督は「こんなに多くの賞を獲得できるとは思わなかった」と興奮気味にスピーチ。今後も先住民をテーマとした作品を製作していく考えを明かし、「先住民を題材とした映画が毎年生まれれば」と願った。
中心人物となる3人の男の子の一人・瓦旦を演じたチェン・ユー(陳宇)は、受賞の感想を尋ねられると、作品中に出てくる台詞を用いて「人生嘛」(これも人生)とつぶやき、子供らしからぬ発言で会場を笑いに包んでいた。
同作は台中市にあるタイヤル族集落「環山部落」で撮影。キャスト全ては先住民で、そのほとんどは素人の役者。3人の男の子は監督が先住民の多い地域の小学校を巡り、探し出したという。低予算の映画ながら、全体的にレベルが高く、生命力にあふれている作品だと審査員から評価された。
作品あらすじ:山間の先住民集落で育った3人の小学生、瓦旦、晨皓、林山。自由奔放でわんぱくながらも、それぞれ異なる家庭上の悩みを抱えている。そんな3人をやさしく見守るのは、車いす生活をしながらも補講クラスを開く拉娃先生。3人の悩みに立ち向かう態度、拉娃先生とのやり取りを通じ、人々の愛や成長を感じさせる温もりあふれる作品。一方で、先住民集落が抱える問題も浮き彫りにしている。先住民バンドのBoxingや歌手のクラウド・ルー(盧広仲)、女優のツァイ・ホァンルー(豆花妹)などがゲスト出演している。台北映画奨に先駆けて発表された国際新監督コンペティションにもノミネートされており、観客賞を受賞した。
◇ 主演賞はコウ・ガとティファニー・シュー主演男優・女優賞に選ばれたのは、ともにホラーサスペンス映画「紅衣小女孩」に出演したコウ・ガ(黄河)とティファニー・シュー(許[王韋]ネイ)。ティファニーは同作のほか、「失控[言荒]言」と短編「世紀末的華麗」での演技も評価され、史上初となる3作品での受賞となった。(ネイ=寧の下半分が用)
名前が呼ばれた瞬間、驚きを隠せない表情を見せたコウ。今後はより幅広い種類の役、作品に挑戦していきたいと意気込みを示し、そのためにも「将来的に台湾でもっと多くのジャンル映画が生まれれば」と期待した。「紅衣小女孩」は赤い服を着た女の子を巡る台湾の都市伝説を題材にした作品。コウは祖母と2人で暮らす不動産営業マン、ティファニーはコウの彼女を演じた。祖母が突然姿を消したのを機に、恐怖の物語が展開されていくというストーリー。実は同作においてコウの出演シーンは決して多くはない。それでも主演賞に選ばれたことについて、審査員を務めた香港の映画監督、シュウ・ケイ(舒[王其])は「平凡な役こそ最も難しい」とし、シナリオにおいては平面的な役ながらも、その中でコウの努力が感じられたと役作りに対する姿勢を高く評価した。
一方、ティファニーの受賞については、出演した3作品がノミネートされているということはそれだけ演技が突出しており、さらに演じられる幅も広いことを示していると言及。審査員による投票は無記名で行われ、それぞれの審査員が3票ずつ投票する形式を採用していたが、1回目の投票で大勢が決まっていたという。