横浜・八景島シーパラダイスなどを運営する横浜八景島が初の海外拠点として手掛けた新都市型水族館「エックスパーク」が8月7日、北部・桃園市にオープンした。「楽しみを通して学びにもつながる」空間と位置づけ、台湾でこれまでにない形の水族館を目指す。9月上旬の週末、実際に館内を巡った筆者がエックスパークの見どころを紹介する。
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▽ 高鉄やMRT桃園駅近隣の開発エリアに立地 交通利便性抜群
エックスパークは、台湾高速鉄道(高鉄、新幹線)桃園駅前の開発エリアに位置する。桃園メトロ(MRT)桃園駅も利用でき、交通アクセスが便利であるほか、商業施設「グロリアアウトレット」(華泰名品城)に隣接しており、水族館と合わせて買い物や食事など1日中楽しめる。桃園市は市民の平均年齢が39.4歳(2019年末現在)と行政院(内閣)直轄6市で最も低く、子育て世代が多いためか、親子連れの姿が目立った。
高鉄桃園駅やMRT桃園駅から向かった場合、アウトレットを通り抜けた先にエックスパークはある。アウトレットを通り抜ける形だとどうしても店に目を奪われてしまい、寄り道をしたくなるが、脇目も振らずにまっすぐに歩けば10分ほどで到着する。
チケットは土日祝日の場合は完全予約制で、前売り券は現時点では旅行予約サイト「KKday」のみでの販売。平日の場合は前売り券が完売していない場合に限り、現地での当日券販売を行う。入場時間が2時間ごとに区切られており、指定時間内であればいつでも入場できる。例えば16時入場の回の場合は、16時から18時までの間であれば入場可能だ。筆者は入場開始時刻から30分ほど遅れて到着したのだが、全く並ぶことなく館内に入ることができた。
開館前の今年7月のメディア向け説明会で運営側が発表した情報によれば、新型コロナウイルスの感染防止策として、1日あたりの入場者数は平日9000人、休日1万人に制限されている。
館内は写真撮影可能だが、三脚や自撮り棒、フラッシュの使用は禁止されているため、注意が必要だ。
▽ 最先端テクノロジーを駆使 エンタメ性高く
展示エリアは建物の1階から3階までとなっており、入口は2階に位置する。13の展示エリアを順路に沿って巡っていく形での参観となる。
エックスパークの最大の特徴は、最先端のテクノロジーを駆使した展示。光や音を融合させ、幻想的な空間に来場者をいざなう。
目玉の一つとなるのが、クラゲの展示エリア。鏡張りの空間の中に円柱状の水槽がいくつか置かれ、その中をクラゲが泳ぐ。空間は赤や白などライトがさまざまな色に変化し、それによって異なる雰囲気を楽しめる。写真映えすること間違いなしだ。
この空間とは別に、クラゲの大水槽を背景に記念撮影ができるコーナーもあり、ここは長蛇の列ができていた。
また、熱帯雨林を再現した展示エリアでは、雨の音や雷の音、鳥のさえずりなどが鳴り響き、それに合わせた映像を地面に投影。まるで熱帯雨林にいるかのような感覚を味わうことができた。
▽ 子供が楽しめる体験型エリアも
テクノロジーを取り入れた、子供向けの体験型エリアもあった。タブレット端末で魚にお絵かきをすると、その魚がスクリーン上に映し出されたバーチャル水槽を泳ぐというもの。スクリーン上の水槽では来場者が描いたカラフルな魚がすいすいと泳ぎ、「これ、私が書いた魚」と楽しそうに話す子供の姿もあった。
記者も子供たちに混じって実際に試してみた。自分がお絵かきをした魚が泳いでいる姿を見られるのは大人でも楽しい。このエリアには、ベンチやペットボトル飲料の自動販売機もあり、一休みもできる。お絵かきを楽しむ子供の姿を見ながら、大人は休憩を取ることもでき、来場者にやさしいスペースだと感じた。
▽ 学びの要素も
興味深かったのは、「クラゲラボ」。赤ちゃんクラゲを生育段階に分けて展示しているコーナーだ。微小なクラゲが大きくなっていく様子がひと目でわかり、クラゲの成長過程を学ぶことができた。
▽ ペンギンを眺めながら飲食を楽しむ 「プロント」台湾1号店が出店
エックスパークには、日本のカフェチェーン「プロント」が手掛けるカフェ「Xcafe by PRONTO」が入っている。プロントが台湾に出店するのは初めてで、これが1号店となる。
店内の座席スペースの中央部にはH字型の水槽が鎮座する。この水槽は上階のペンギンエリアとつながっており、ペンギンが時おりこの水槽まで泳ぎに来るのだ。いつも来てくれるとは限らないようだが、筆者がカフェに滞在していた1時間ほどの間には、ペンギンが何度か姿を見せてくれた。飲食を楽しみながらペンギンを眺めることができるのは、また一味違った趣がある。ペンギンが水槽に現れる度に「ペンギン!」との歓声が子供たちから上がり、店内にはほのぼのとした空気が漂っていた。店内では、ペンギンの足跡のデザインが入ったラテやどら焼きなども販売されていた。
▽ 日本の水族館初の海外輸出 成功なるか
横浜八景島の公式サイトによれば、建物の延床面積は約1万4800平方メートル、水量は約3000トン。
(参考:沖縄美ら海水族館の総水量は約1万トン、東京スカイツリー内のすみだ水族館は約700トン)
「都市型水族館」と聞いて、「せいぜい1時間くらいで見終わるだろう」と記者は考えていたのだが、写真を撮ったり、インタラクティブエリアで遊んでいたりしたら、展示エリアを見終わるだけで約2時間半も経っていた。それからカフェで食事をとったり、ギフトショップで商品を物色したりしているとあっという間に時間が過ぎ、合計滞在時間は4時間ほどになっていた。
運営する横浜八景島が「世界でも唯一無二のエデュテインメント施設を目指す」としている言葉の通り、まさに学びと遊びを融合させている施設だと感じた。日本の水族館として初の本格的な海外輸出となったエックスパーク。オープン当初は夏休み真っ只中だったということもあり、前売り券が連日完売となるほどの盛況ぶりだったが、新学期が始まった現在は前売り券を比較的買いやすくなっており、客足が落ち着き始めているようだ。年間パスポートの発行も予定されているといい、今後、どのように台湾の人々に受け入れられていくのかに注目したい。(名切千絵)
取材協力:KKday