ホウ・シャオシェン監督作品の中の台湾~今も残る名所・失われた風景~

2020/11/17 06:13 文字サイズ: 字級縮小 字級放大

21日に授賞式が開かれる「第57回ゴールデン・ホース・アワード」(金馬奨)の「生涯功労賞」(終身成就奨)受賞者に、台湾の映画監督、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督が選ばれた。授賞式を前に、ホウ監督が生み出した数々の名作に登場した台湾各地の風景を紹介する。

▽「ミレニアム・マンボ」基隆・中山歩道橋

 「ミレニアム・マンボ」(千禧曼波、2001)で印象的なシーンといえば、主演のスー・チー(舒淇)がまっすぐにつづくトンネルのような道を長い髪をたなびかせながら弾むように歩く幻想的な一幕。



 このシーンが撮影された北部・基隆市の基隆駅そばの「中山陸橋」(歩道橋)は映画公開後に一躍注目を浴び、観光名所となった。全長約130メートル。基隆駅の表と裏のエリアを結ぶ連絡通路の役割を果たしている。だが、老朽化に伴い、早ければ今年末にも取り壊される見通し。

「ミレニアム・マンボ」でスー・チーが歩く名シーンが撮影された基隆・中山歩道橋

「ミレニアム・マンボ」でスー・チーが歩く名シーンが撮影された基隆・中山歩道橋

▽「恋恋風塵」新北・平渓線線路

 台北近郊・九份の炭鉱の村出身の幼なじみの男女の物語を描いた「恋恋風塵」(1987)。主人公の2人が制服姿で線路を歩くシーンは、台湾鉄路管理局(台鉄)のローカル線、平渓線の線路で撮影された。

「恋恋風塵」で主人公の2人が制服姿で線路沿いを歩く名シーン(中影提供)

「恋恋風塵」で主人公の2人が制服姿で線路沿いを歩く名シーン(中影提供)

平渓線線路(資料写真)

平渓線線路(資料写真)

▽「童年往事 時の流れ」嘉義・嘉義旧監獄そばの宿舎エリア

 ホウ監督の自伝的映画「童年往事 時の流れ」(1985)の主な舞台になったのは、南部・嘉義市だ。嘉義旧監獄(現・獄政博物館)そばの、日本式建築が立ち並ぶ宿舎エリアで撮影が行われた。嘉義旧監獄はホウ監督の尽力もあり、現在は古跡に登録されている。

「童年往事 時の流れ」のワンシーン(中影提供)

「童年往事 時の流れ」のワンシーン(中影提供)

獄政博物館(嘉義旧監獄、資料写真)

獄政博物館(嘉義旧監獄、資料写真)

▽「風櫃の少年」高雄市街

 ホウ監督が自身のスタイルを打ち出し始めた最初の作品とされる「風櫃の少年」(風櫃來的人、1983)。ホウ監督自身もかつて、この作品が監督人生の転換点になったと何度も言及している。

 この作品は南部・高雄と離島・澎湖で撮影された。高雄はホウ監督が少年時代を過ごした場所でもある。澎湖から高雄にやってきた3人の少年が騙されて空っぽのビルに上り、高雄市街地を眺めるシーンは多くの人の記憶に残る名場面となっている。

「風櫃の少年」で、騙されてビルに上った少年が高雄市街地を眺めるシーン(三三製作提供)

「風櫃の少年」で、騙されてビルに上った少年が高雄市街地を眺めるシーン(三三製作提供)





▽「百年恋歌」台北の日常の街並み

 異なる3つの時代の3組の男女の恋愛を、スー・チーとチャン・チェン(張震)がそれぞれ演じたオムニバス映画「百年恋歌」(最好的時光、2005)。2005年の台北を舞台にした第3部「青春の夢」では、スー・チーが憂いを帯びた表情を浮かべながら屋上に佇むシーンが観客の心を強く掴む。高層ビルや商業ビルなどの姿はなく、台北に住む人が目にするリアルな日常の風景が映し出されている。

「百年恋歌」で、スー・チーがベランダに佇むシーン(蔡正泰撮影、三視影業提供)

「百年恋歌」で、スー・チーがベランダに佇むシーン(蔡正泰撮影、三視影業提供)





▽「ナイルの娘」台北・蟾蜍山

 1987年の「ナイルの娘」(尼羅河女兒)は、それまでの「風櫃の少年」や「童年往事 時の流れ」など小市民が生活する町の様子を写し出した作品とは異なり、きらびやかな台北の夜の生活が描き出され、ホウ監督作の中では独特の魅力を放つ作品となっている。

 ディスコを除き、主な撮影地となったのは、台北・公館付近の「蟾蜍山」。傾斜地にいくつもの小さな家が立ち並び、台北市街地にありながらも静けさを保っている。

 1990年代には蟾蜍山の一部が近隣の台湾科技大学の増築工事予定地とされ、傾斜地の集落が解体の危機に面したが、保存を支持するホウ監督や民間団体などの努力により、2016年、蟾蜍山は市の文化景観に登録された。



蟾蜍山(中央社資料写真)

蟾蜍山(中央社資料写真)

▽「悲情城市」新北・九份

 国民党政権が市民を武力弾圧した1947年の「2・28事件」を背景に、時代にのみ込まれる小市民の悲哀を描き出した「悲情城市」(1989)の主な舞台は、新北市九份。今では外国人観光客も訪れる有名観光地になっている。

 劇中でトニー・レオン(梁朝偉)が営む写真館として登場した「八角亭」は、かつては日本人専門の理髪店だったが、台風被害によってその姿は失われた。

有名観光地・九份を代表する存在の「豎崎路」

有名観光地・九份を代表する存在の「豎崎路」



(鄭景雯、王心妤/編集:名切千絵)