台湾出身の作家・東山彰良さん 庶民グルメ「大腸包小腸」を絶賛 インタビュー(後)

2019/11/28 02:49 文字サイズ: 字級縮小 字級放大

台湾出身の作家、東山彰良さんの連作集「小さな場所」が14日、台湾と日本で同時発売された。台北の「紋身街」と呼ばれる通りを舞台に、9歳の少年とそこに集う大人たちの交流を描いた作品だ。台湾に滞在していた東山さんに11月中旬、インタビューを行った。後編は、台湾での過ごし方について話を聞いた。(作品について聞いた前編はこちら

▽未知のエリアを散策 台湾を再発見

 東山さんは1968年生まれで、5歳ごろまで台北で過ごした。当時は台北市西部の万華エリアにある広州街に暮らしていたため、台北の西側になじみが深いという。作品に登場する地名もほとんど台北の西側の地域だ。近年、仕事で台湾に帰ってきた際には、今まではあまり足を運ばなかったエリアのホテルに泊まることもあり、ホテル周辺を散策することで、これまで知らなかった地域を「再発見している」と語る。

 11月には東部・花蓮県の東華大学のライター・イン・レジデンス(駐校作家)のプログラムで同県内に2週間滞在した。花蓮市の大型ナイトマーケット「東大門夜市」では「大腸包小腸」(もち米の腸詰めにソーセージを挟んだ食べ物、ライスホットドッグ)を初めて食べたといい「美味しさを知って衝撃を受けた。めちゃくちゃうまい」と大絶賛。大腸包小腸は1990年代にブームになったとされ、東山さんが台湾に住んでいたころにはなかったのだという。

「大腸包小腸」(左)、「東大門夜市」(右)=いずれも中央社資料写真

「大腸包小腸」(左)、「東大門夜市」(右)=いずれも中央社資料写真

「日本統治時代のものが近くにあれば見に行く」という東山さん。花蓮では、日本統治時代に日本人が移り住んだ「旧豊田村」に足を運んだり、当時林業が行われた林場集落跡地「林田山林業文化園区」を訪れたりし、「かつての日本の名残を至る所で感じられた」と振り返る。台湾鉄路管理局(台鉄)の列車で県内の吉安駅を通りかかった際、駅名を伝える車内放送で中国語や英語とともに「よしの」というアナウンスがあったことをきっかけに、同駅付近にかつて「吉野村」という移民村があったことを知ったという。日本統治時代の名残がある場所を訪れるのは、「刺激を与えてもらって、何か物語が見つかるかもしれない」との期待があるからなのではないかと明かした。

▽東山さんおすすめの台湾旅 

 台湾に来ると庶民グルメばかり食べているといい、東山さんの庶民グルメへの愛着の強さは「朝ごはんは焼餅油條」(サクサクの焼きパンに揚げパンを挟んだもの)と名指しするほどだ。「食べ物はどれもおいしい。何でも食べてみるといい」と太鼓判を押す。

 「台北を離れて、花蓮とかの何もないところにある民宿とかいいですよね」。東山さんも今回の花蓮滞在では市街地から離れた場所にある民宿に宿泊したという。「本当にくつろぐこと以外何もすることがない。こういう民宿が台湾にあるのかと。日常をおいて台北を離れていくと時間の流れが違ってくる」。駆け足ではなく、のんびりとした過ごし方をするのが、東山さんおすすめの台湾旅だ。

 東山さんの小説には、日本人にとってはあまり馴染みのない台湾の歴史的事件なども盛り込まれている。「読書をするひとは楽しいだけじゃなくて何か学びたいという要求もあるので、そこをすくい取って入れたというところもあるんじゃないかと思う」。物語の上での必要性が大前提だが、それに加え、台湾の歴史を知ってもらいたいという思いも根底にある。「(台湾を)知った上で来たほうが、もっと旅が深くなる」。グルメを楽しむだけではなく、もう一歩踏み込んで台湾への理解を深めてほしいとの気持ちをにじませた。

▽台湾の読者と交流 リン・チーリンとAKIRAの結婚式にも言及

 東山さんは17日、台北市内で、新刊発売を記念した座談会に出席。「小さな場所」に収録される6編それぞれの執筆エピソードを語ったほか、台湾の読者の質問に答えたり、サインや写真撮影に応じたりするなどし、交流を楽しんだ。この日は女優のリン・チーリン(林志玲)さんと人気グループEXILEのAKIRAさんの結婚式が南部・台南で行われる日だったことから、自らこの話題に言及する一幕も。司会者に「先生もこのニュースを知っているんですか」と聞かれると、「彼女(チーリン)の旦那さんはAKIRA。わたしもアキラですから」と話し、会場を笑いに包んだ。(名切千絵)

台北市内で11月17日開かれた座談会で、読者の質問に答える東山さん

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新作「小さな場所」の舞台になった台北市西門町の紋身街

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