台湾南部・シラヤ風景区でグルメの旅 マンゴーやハスの実味わう

2018/06/15 03:11 文字サイズ: 字級縮小 字級放大

南部・嘉義県と台南市にまたがる「シラヤ国家風景区」。馴染みのない人が多いかもしれないが、マンゴーの産地として有名な玉井や日本人水利技師の八田与一が設計した烏山頭ダムなどはこのエリアに位置し、周辺にはハスの実の主要産地の白河などもある。同エリアの最大の売りは豊かな自然。農業が盛んに行われているため、新鮮な食材を使ったグルメが味わえる。記者は5月中旬、同風景区管理処の招きで現地を訪れ、同エリアの魅力に触れた。

~シラヤ国家風景区とは~

国道3号線の東側、南部・嘉義県中埔郷から台南市左鎮区までのエリアで、面積は約9万5470ヘクタールに上る。同エリアには平埔族群(エスニックグループ)に分類されるホアンヤ族やシラヤ族が居住しており、平埔族群の文化の特色を示すため、国家風景区の名称に「シラヤ」と付けられたという。

台南市南化区の省道台3線沿いのマンゴー畑に実るマンゴー(左)と同市白河区のハス池(右)。

台南市南化区の省道台3線沿いのマンゴー畑に実るマンゴー(左)と同市白河区のハス池(右)。

▽夏の果物マンゴーの産地・玉井 マンゴー畑広がる 

台湾の夏の果物といえば、マンゴーは外せない。エリア内の台南市玉井や南化はマンゴーの主要産地として知られる。省道台3線沿いにはマンゴー畑が広がり、所狭しとマンゴーの木が並ぶ。記者が訪れた5月中旬は収穫シーズン前だったこともあり、赤く色づき始めた小ぶりのアップルマンゴー(愛文)や紙袋で保護されたキーツ(凱特)などがたくさん実っている光景を目にすることができた。都会ではなかなか見られない一面マンゴーだらけの風景に、思わず心が躍る。

台3線沿いのマンゴー畑。山に見える白い点々は、マンゴーを保護する袋(左)

台3線沿いのマンゴー畑。山に見える白い点々は、マンゴーを保護する袋(左)

玉井の青果市場に足を運ぶと、パイナップルやパパイヤなどが大量に積まれたかごがずらり。マンゴーも店頭に並んでいたが、玉井産はまだ少なく、主に販売されていたのは屏東県枋山産。小ぶりのものだと一山200台湾元(約740円)という安さだった。収穫最盛期になれば、もっと安く手に入れられることだろう。

玉井青果市場に並ぶ果物

玉井青果市場に並ぶ果物

玉井の中心部にある「玉井老街」(古い町並み)には、マンゴーかき氷を販売する店が点在する。記者が立ち寄った「有間冰舖」は新鮮なマンゴーが年中食べられるのが特徴。シーズンに合わせて異なった産地、品種のマンゴーを入荷しており、この時提供していたのは枋山産。同店の農園で栽培した玉井産が提供できるのは6月末から8月中旬までの1カ月余りになる見通しだという。

玉井老街(左)。地域を活性化させようと、芸術的な雰囲気を取り入れ、「玉井“不”老街」としてPRする取り組みも行われている。右は「有間冰舖」のマンゴーかき氷。新鮮なマンゴーがたっぷり乗っているだけでなく、かき氷の部分もマンゴージュースを固めた氷を使用。自社農園の収穫期にはアイスも同店で作るという。

玉井老街(左)。地域を活性化させようと、芸術的な雰囲気を取り入れ、「玉井“不”老街」としてPRする取り組みも行われている。右は「有間冰舖」のマンゴーかき氷。新鮮なマンゴーがたっぷり乗っているだけでなく、かき氷の部分もマンゴージュースを固めた氷を使用。自社農園の収穫期にはアイスも同店で作るという。

▽ハスの名産地・白河でハスの実料理を堪能

台南市白河はハスの名産地。栽培面積は250ヘクタールで台湾一を誇る。あちこちにハス池があり、ハスの花が見頃を迎える5月末から6月中旬にかけては例年多くの行楽客や撮影愛好家などが訪れるという。記者が足を運んだのは5月中旬だったが、すでに多くのハスの花が咲いていた。

一面に広がるハス池。ハスは早朝に花開くため、午前6時半~7時半ごろまでが写真撮影に最適な時間だという。

一面に広がるハス池。ハスは早朝に花開くため、午前6時半~7時半ごろまでが写真撮影に最適な時間だという。

白河で栽培されるハスは主に食用。ハスの実やれんこんパウダーは白河名物になっており、現地ではハスの実を使ったメニューが味わえる。

ハスの実は、花が枯れた後に残る花托(かたく)の部分から収穫される(左)。収穫後のハスの実(右)。生でも食べられ、クリのような食感。

ハスの実は、花が枯れた後に残る花托(かたく)の部分から収穫される(左)。収穫後のハスの実(右)。生でも食べられ、クリのような食感。

驚いたのは、ハスの実料理のアレンジの幅広さ。かき氷やおしるこなどスイーツのトッピングとして使われるのが一般的だと思っていたが、細かく刻んで茶碗蒸しの具にしたり、マヨネーズで和えたりと、今まで見たことがなかった料理に出会った。ハスの実自体は控えめな味のためか、どのメニューも他の食材とマッチしており、意外と使いやすい食材なのではないかと感じた。

ハスの実を使った料理。お粥や茶碗蒸し、炒めものなどにハスの実が入っている(左)。民間団体「稲荷咖工作坊」は、1泊2泊のツアーのプログラムの一つとしてハス池でハスの実を使った朝食を食べられるサービスを提供している(ハスの見頃のシーズンのみ)。同団体のフェイスブックで予約可能。左は、美雅家具観光工場のレストランで提供されるハス料理セット。ハスの花を使ったハス茶はさっぱりとした味わい。

ハスの実を使った料理。お粥や茶碗蒸し、炒めものなどにハスの実が入っている(左)。民間団体「稲荷咖工作坊」は、1泊2泊のツアーのプログラムの一つとしてハス池でハスの実を使った朝食を食べられるサービスを提供している(ハスの見頃のシーズンのみ)。同団体のフェイスブックで予約可能。左は、美雅家具観光工場のレストランで提供されるハス料理セット。ハスの花を使ったハス茶はさっぱりとした味わい。

白河では民間団体「稲荷咖工作坊」によって地域おこしが進められている。同団体は地域の特色ある農家や業者などと手を組み、白河の文化を深く楽しめるツアーを開催。呉長庚理事長は、重視しているのは「体験」だと語る。体験してもらうことで地域との結びつきを感じてもらうのがねらいだという。

「稲荷咖工作坊」の呉長庚理事長

「稲荷咖工作坊」の呉長庚理事長

白河の内角地区では、地域に分布する紅土を使った「紅土鹹蛋」(塩漬け卵)を名物として普及させる取り組みが行われている。手作り体験も提供されており、多くの人で賑わっていた。

鹹蛋は、表面を酒で洗ったアヒルの卵を塩水を混ぜた紅土で団子状に包み、常温で20日ほど置けば完成。製造途中はその見た目に少し敬遠してしまったが、出来上がった鹹蛋は程よいマイルドな塩加減で、おすそ分けをした台湾の友人にも絶賛されるほどの美味しさだった。

「紅土鹹蛋」を作る参加者(左)。土をまぶし終わったもの(右)。この状態で20日ほど置き、土をはらってから蒸して食べる。

「紅土鹹蛋」を作る参加者(左)。土をまぶし終わったもの(右)。この状態で20日ほど置き、土をはらってから蒸して食べる。

▽新鮮な食材を使った庶民派グルメ

シラヤ風景区を訪れて印象に残ったのは、野菜がふんだんに使われているメニューが多く、小吃(シャオチー)と呼ばれる庶民的な一品料理でも他所とは一味違ったアレンジが加えられていること。

廃れていた農村を芸術で活性化させた台南市後壁区の「土溝農村美術館」の中心的施設「優雅農夫芸術特区」で提供されるセットメニューの中心は野菜。魏婉如執行長(CEO)によれば、食材は大部分が地元産で、農家にその時あるものを買ったり、近隣の県から仕入れたりしているという。野菜のおかずの多くは味付けが控えめで、素材そのものの味わいが楽しめた。

「優雅農夫芸術特区」のセットメニュー(左)。看板メニューは炊き込みご飯の「割稲飯」。大根の千切りや人参などが具材として入る。農家がよく作るご飯で、家庭によって味わいが異なるのだという。同店の外観(右)。敷地内には、「農村美術館」の取り組みに参加する芸術家6人が手掛けた庭園があり、散策を楽しめる。

「優雅農夫芸術特区」のセットメニュー(左)。看板メニューは炊き込みご飯の「割稲飯」。大根の千切りや人参などが具材として入る。農家がよく作るご飯で、家庭によって味わいが異なるのだという。同店の外観(右)。敷地内には、「農村美術館」の取り組みに参加する芸術家6人が手掛けた庭園があり、散策を楽しめる。

烏山頭ダムから車で約5分ほどの場所にある六甲中心部の「六甲媽祖廟サ氷」で出されるかき氷は、なんと言っても安くて豪快なのが特徴。一般的なかき氷店では、トッピングの種類数によって値段が変わるが、この店では「何種類選べるのですか」と聞くと「適当に」という返事が返ってくる。つまり、何種類選んでもいいらしい。おまかせで注文すると、太っ腹にも10種類ほどのトッピングを入れてくれた。これで1杯35元(約128円)というから驚きだ。上に「麺茶粉」という穀粉と砂糖などを炒めて作った粉がかかっているのも珍しい。懐かしい味で、甘さはしっかりしているがスッキリとしていて、一人でぺろりと平らげてしまった。(サ=坐にりっとう)

「六甲媽祖廟サ氷」のかき氷(右)。具材は緑豆、花豆、米苔目、粉円(小粒のタピオカ)、仙草ゼリーなど。かき氷器でその都度氷を削るのではなく、予め削られた氷を容器から手ですくってお椀の中にいれる作り方(手抓冰)が採用されている(左)。

「六甲媽祖廟サ氷」のかき氷(右)。具材は緑豆、花豆、米苔目、粉円(小粒のタピオカ)、仙草ゼリーなど。かき氷器でその都度氷を削るのではなく、予め削られた氷を容器から手ですくってお椀の中にいれる作り方(手抓冰)が採用されている(左)。

六甲市場のすぐそばで、キッチンカーで販売を行っている「郭記炸蛋蔥油餅」の蔥油餅(ネギを混ぜ込んだ小麦粉生地を焼いたもの)は、台湾バジルが入っているのが珍しい。比較的油っこい蔥油餅も、台湾バジルのさわやかさが加わることで食が進む。

「郭記炸蛋蔥油餅」

「郭記炸蛋蔥油餅」

同じく六甲市場の周りに出店するジューススタンド「乳果吧」も前述の六甲媽祖廟サ氷に負けず劣らず太っ腹だ。1杯注文すると、容器に入り切らないほど大量のジュースを作ってくれる。その場で一部を飲むよう促され、容器に空きができたら残りをさらに注いでくれた。土地柄、新鮮な果物が安く手に入るからなのだろうか、目分量で、作りやすい量で作っているようで、店主のおおらかな人柄が感じられた。

「乳果吧」。右の写真の計量カップに入っているのは、カップに入りきらなかった分。

「乳果吧」。右の写真の計量カップに入っているのは、カップに入りきらなかった分。

玉井中心部のロータリーそばで30年余りにわたって大腸包小腸(もち米のホットドッグ)を販売する「黒輪伯」。店主の黄財春さんによると、もち米の腸詰めとソーセージはいずれも独学で学んだといい、無添加なのがこだわり。変わった形の包丁を使っていたので聞いてみたところ、「十数年同じものを使っているうちにこんなに細くなってしまった」と笑う。もち米の腸詰めは皮が破れているもののほうが実はもちもち感が強いという裏知識も教えてくれた。ツウはあえて皮が破れたものを買っていくのだという。

「黒輪伯」。もち米の腸詰めとソーセージは切って出してくれる(右)。

「黒輪伯」。もち米の腸詰めとソーセージは切って出してくれる(右)。

台湾で唯一の泥湯温泉、関子嶺温泉はシイタケでも有名。商店街を歩くと、店頭にどっさりとシイタケが置かれ、下処理をしている光景を目にすることができた。新鮮なものから乾燥もの、加工品まで様々なシイタケが安く販売されていた。

シイタケを販売する「木成香菇場」の店頭の様子(左)。店の奥には大量の干しシイタケが保存されていた(右)。店員によると、シイタケは関子嶺南部の南寮で栽培されているという。

シイタケを販売する「木成香菇場」の店頭の様子(左)。店の奥には大量の干しシイタケが保存されていた(右)。店員によると、シイタケは関子嶺南部の南寮で栽培されているという。

▽のんびりとした雰囲気が楽しめるシラヤ

シラヤ風景区には、台北などの都市のように高層ビルはなく、賑やかな繁華街もない。小さな町が点在し、町を抜けるとすぐに一面の畑が広がる。だからこそ、のんびりとした雰囲気が存分に味わえる。

今回記者が足を運んだ地域のほかにも、コーヒーで有名な東山や日の出の鑑賞スポットとして知られる二寮など見どころは多く存在する。

白河の田園風景(左)と烏山頭ダムから見た景色(右)

白河の田園風景(左)と烏山頭ダムから見た景色(右)

地元の人々と交流して感じたのは、積極的に話しかけてくることは少なく控えめな一方で、一旦質問をすると熱心に答えてくれる温かさ。美食や自然だけでなく、地元の人々と何気ない交流が楽しめるのもシラヤの魅力だろう。

ハスの実を使った朝食を提供してくれた白河の民宿「柚香園」のオーナー夫妻(左)と玉井で30年余りにわたり鍛冶屋を営む鍛冶職人の男性(右)

ハスの実を使った朝食を提供してくれた白河の民宿「柚香園」のオーナー夫妻(左)と玉井で30年余りにわたり鍛冶屋を営む鍛冶職人の男性(右)

シラヤ風景区の各地への観光は貸切タクシーの利用が推奨される。台湾高速鉄道(高鉄)嘉義駅などでもチャーター可能。また、高鉄嘉義駅と関子嶺を結ぶシャトルバス「台湾好行関子嶺故宮南院線」が毎日4往復運行されている。(名切千絵)

台湾好行の関子嶺バス停。

台湾好行の関子嶺バス停。