温泉地として知られる新北市烏来(ウーライ)で1月7日、「烏来渓谷マラソン」が開催された。烏来は山あいに位置し、空気が澄んでいるため、肺をきれいにする聖地とも呼ばれる。あいにくの雨に見舞われたが、霧に包まれた水墨画のような美しい景色と澄んだ空気に癒やされながらランニングを楽しんだ。
▽台風被害を乗り越え 3年ぶりの開催
同大会の開催は3年ぶり2回目。烏来は2015年夏に襲った台風で大きな被害を受け、大会の開催は以降ストップしていたことから、待ちに待った実施となった。参加者は約3500人。
大会のメインビジュアルは「2」の数字が目を引く。主催した新北市観光旅遊局の担当者によれば、やっとの思いで2回目の開催にこぎ着けたという意味と、勝利のブイのメッセージが込められているという。
種目は2015年の初開催時には26キロと13キロが設定されたが、今回はフルマラソンとハーフマラソンに変更された。国際マラソン・ロードレース協会(AIMS)のコース認証を受けている。
関連記事:烏来の台風13号被害、日本の救助隊が支援活動に参加
▽烏来の名所を巡るコース
記者が挑戦したハーフマラソンのコース沿線には温泉街や観光トロッコの線路、烏来滝をはじめとした数々の滝、つり橋、台湾原住民(先住民)タイヤル族のトーテムがデザインされた信福路トンネルなど見どころが点在する。ランニングをしながら烏来の名所を回れるのもこの大会の魅力だ。
ただ、山間部ということで高低差が大きく、ランナーは脚力が試される。ハーフのコースの高低差は約300メートル。標高100メートル余りの地点から400メートル余りまで駆け上がる。11.95キロの折り返し地点までには一部下りもあるが、基本的にはひたすら上っていく。また、中間地点手前の9キロ過ぎには急勾配の心臓破りの坂が約100メートル続き、ランナーを苦しめる。▽悪条件を打ち消すほどの豊かな自然で癒される
雨で迎えた大会当日。スタートからしばらくは雨脚が弱まっていたが、途中で強い雨に見舞われた。ただ、気温は15度前後あり、幸いにも寒さはあまり感じなかった。
上り坂はさすがに辛かったものの、美しい景色に加え、所々でキンモクセイの香りが漂ったり、鳥のさえずりが聞こえたりと豊かな自然を感じ、解放感に包まれた。これは都市型マラソンでは味わえない感覚だろう。また、復路では楽器の演奏で選手を応援する先住民の姿も見掛け、先住民集落がある烏来ならではの風情を感じた。記者のゼッケンを見て、「がんばれ」と日本語での声援を送ってくれる沿道の人にも出会った。脚はさすがに疲れていたが、爽快な気持ちでゴールできた。ネットタイムは3時間10分11秒。総合成績では1945人中987位とほぼ中間で、完走が目標だった記者にとってはまずまずの記録だった。今大会のハーフの制限時間は3時間30分。
ゴール地点の勇士広場には商店が立ち並んでおり、烏来らしいグルメを売っている店もあった。参加者には地元の特約店で使える50元券が配布されており、走り終わった直後に券を使って温かい食べ物にありつけるのはうれしい計らいだと感じた。▽マラソンに合わせて温泉とグルメを満喫
烏来は台北市中心部から車やバス、MRT(メトロ)などで約1時間ほど。温泉が楽しめるほか、烏来老街(古い町並み)では先住民料理も満喫でき、日帰りで行ける観光地として台北や新北の市民に親しまれている。
大会は朝6時のスタートだったため、台北市内と会場を結ぶシャトルバスが運行された。だが、台北の出発時間は午前3~4時とかなり早く、さすがに朝は辛かった。
次回は前日から泊まりでゆっくり参加し、温泉とグルメを存分に楽しみたいと想像を膨らませながら帰宅の途に就いた。
また、桜の名所としても有名な烏来。烏来では例年1月下旬から4月に桜が見ごろを迎える。もしマラソン大会が桜の季節に開催されれば、より美しい風景を目にできるだろうと感じた。関連記事:台北郊外・烏来でヒカンザクラ満開 夜桜鑑賞イベントも/台湾
(名切千絵)