台湾の権威あるテレビアワード「金鐘奨」(ゴールデン・ベル・アワード)の第52回授賞式が9月30日、国父紀念館(台北市)で開催された。今回は応募された1956件が38の賞を争った。
▽植劇場のサスペンス「天黒請閉眼」が長編ドラマ部門作品賞
長編ドラマ部門作品賞を制したのは「天黒請閉眼」。同作は、山間部の民宿に集まった登山サークルの仲間8人が次々と殺され、過去の事件も明るみに出ていくというサスペンスで、高品質を売りに制作されたドラマシリーズ「植劇場」の一作品でもある。台湾ドラマではこれまでサスペンスは少なく、受賞スピーチを行った総製作指揮者のワン・シャオディー(王小棣)監督やキャストらによると、撮影時に困難もあった上に、放送時には視聴者からの批判も多くあったという。植劇場は24項目にノミネートされ、最終的には5部門受賞にとどまった。ワン監督は、植劇場は成長の場だとし、台湾ドラマをより良くしようと努力する人たちに対し、「応援します」と力強く訴えた。
「植劇場」の各作品には、目玉となる大物俳優のほか、同プロジェクトで育成した新人が多数出演。その中で、新人も受賞を果たした。「天黒請閉眼」に出演したスン・クーファン(孫可芳)は長編ドラマ助演女優賞を獲得した。「恋愛沙塵暴」で、恋に悩む正義感の強いサバサバとした性格の大学生を好演したチェン・ユー(陳[女予])は、長編ドラマ部門新人賞を手にした。関連記事:http://japan.cna.com.tw/search/201608100013.aspx?q=%E6%A4%8D%E5%8A%87%E5%A0%B4
▽長編ドラマ部門主演男優&女優はベテランの二人に長編ドラマ部門の主演男優賞は「這些年那些事」のリウ・ダーカイ(劉徳凱)が、同主演女優賞は植劇場「恋愛沙塵暴」のクー・シューチン(柯淑勤)が獲得。
「這些年那些事」は1970年代の眷村(戦後に国民党と共に台湾に渡った軍人やその家族が住んだ地区)を舞台とした作品で、ダーカイは男一人で子供を育てる退役軍人を演じた。近年は中国大陸を中心に活躍し、今作で約20年ぶりに台湾ドラマ復帰を果たしており、受賞スピーチでは「今後も台湾のドラマ界に貢献したい」と意欲を見せた。シューチンは「恋愛沙塵暴」で、家庭内で自分の献身が報われないことに悩む中年の母親を熱演。2度目の受賞となった。受賞スピーチでは「魂で演じる役者が必要だと思ってきた」と女優業にかける熱い思いを語り、迫力と自信に満ちたスピーチで独特の魅力を放った。▽話題作「通霊少女」はミニドラマ作品賞など2部門台湾の公共放送局、公共テレビ(公視)が米ケーブルテレビ放送局HBOアジアらと共同制作し、同局開局以来最高視聴率となる4.4%を記録した「通霊少女」はミニドラマ部門作品賞とミニドラマ(テレビ映画)助演女優賞の2部門を受賞した。
助演女優賞を手にしたリー・チェンナ(李千娜)は、同作では霊媒師の女子高生に心を救われる人気歌手を演じた。チェンナーは金鐘奨3度目のノミネートで初受賞。関連記事:http://japan.cna.com.tw/search/201704260005.aspx?q=%E9%80%9A%E9%9C%8A%E5%B0%91%E5%A5%B3
▽テレビ映画「告別」「最後的詩句」がともに最多4部門最多受賞は「告別」と「最後的詩句」の各4部門で、いずれも公共テレビが手掛けたテレビ映画。告別はテレビ映画作品賞や監督賞など、最後的詩句は主演男優・女優賞などを獲得した。
「最後的詩句」は16年の年月における恋人同士の心のぶつかり合いや関係の変化を描いた作品。フー・モンボー(傅孟柏)とウェン・チェンリン(温貞菱)が恋人を演じた。チェンリンが制したミニドラマ(テレビ映画)主演女優賞は、ティファニー・シュー(許[王韋]ネイ)やグオ・シューヤオ(郭書瑤)ら注目の女優がズラリと顔をそろえ、激戦区とされた。「最後的詩句」はモンボー演じる彼氏を中心とした物語のため、チェンリンの出番はそれほど多くないものの、その中で存在感を放ち、感情を丁寧に伝えた演技が評価された。チェンリンは24歳の若さにして、金鐘奨受賞は2度目。(ネイ=寧の下半分が用)
モンボーは金鐘奨初受賞。昨年は「一代新兵之八極少年」で長編ドラマ部門の主演男優賞にノミネートされていた。「最後的詩句」では一人の男性がキラキラした青春時代から社会の波にもまれ落ちぶれていくまでの変貌を演じ分けた。モンボーは現在30歳ながらも、ドラマデビューは2012年と経歴はそれほど長くない。受賞スピーチでは「今年30歳、わたしの演技の道は始まったばかり。今後もっと多くの作品を届けていきたい」と意欲をみせていた。
▽バラエティー番組司会者賞にショウ・ルオ歌手、俳優として活躍するショウ・ルオ(羅志祥)は、「娯楽百分百」でタレントのカイルー(ガイ楽)とともにバラエティー番組司会者賞を受賞。過去に主演男優賞に3度ノミネート、2015年にはバラエティー番組司会者にノミネートされていたものの、いずれも賞は逃していたため、念願の金鐘奨初受賞となった。プレスルームでは、監督や脚本家などドラマや映画の制作陣に対して「オファーをよろしく」とラブコールを送り、役者としての受賞にも意欲を見せた。(ガイ=りっしんべんに豈)
(名切千絵)