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稲穂香る台東・池上 田んぼの間をサイクリング

2017/06/01 16:58
池上の田園風景=田辺倶楽部から撮影
池上の田園風景=田辺倶楽部から撮影

金城武が出演した航空会社のCMが撮影されたのをきっかけに一躍人気の観光地となった東部・台東県北部の池上郷。もともとはコメの産地として有名で、郷内には広大な田んぼが広がる。田んぼの中には自転車道が整備されており、のどかな景色を眺めながらサイクリングを楽しむことができる。記者は5月上旬、池上を訪れた。

自転車道の脇にはコメをモチーフにしたキャラクターのイラストなどが描かれている
自転車道の脇にはコメをモチーフにしたキャラクターのイラストなどが描かれている
◆米どころ池上

中央山脈と海岸山脈に挟まれた平原、花東縱谷に位置する池上。池上は降水量が豊富で水や大気の汚染も少なく、稲作に有利な環境が整っていることから、イネの栽培が盛んに行われている。同地で生産されたコメは「池上米」のブランドとして台湾全土に名を馳せる。池上といえばもう一つ有名なのは「池上弁当」。1940年代に池上駅で販売された駅弁を起源としているのだが、池上米のブランドイメージとも相まって、現在では台湾全土で池上弁当と銘打った弁当が販売されている。

金城武出演のエバー航空CM(エバー航空公式Youtubeより)
金城武出演のエバー航空CM(エバー航空公式Youtubeより)
◆「金城武の木」で観光地としてより大きな脚光浴び始める

米どころとして有名だった池上は2013年、一層大きく脚光を浴びることになる。池上で撮影されたエバー(長栄)航空のCMで、俳優の金城武がお茶を飲むシーンに登場したアカギの木が「金城武の木」として注目され、連日観光客が押し寄せるようになったのだ。

ずらりと並ぶレンタサイクル。自転車は一般的なシティサイクルから電動のものまで様々。体力に合わせて選べる。記者が借りたシティサイクルのレンタル料は1日150台湾元(約560円)。レンタル店では荷物預かりもしてくれる。
ずらりと並ぶレンタサイクル。自転車は一般的なシティサイクルから電動のものまで様々。体力に合わせて選べる。記者が借りたシティサイクルのレンタル料は1日150台湾元(約560円)。レンタル店では荷物預かりもしてくれる。
◆駅前で自転車を借りサイクリングに出発

池上の観光手段としては自転車が一般的。池上駅前にはレンタサイクル店が数軒あり、記者もここで自転車を借りてサイクリングに出発した。

大坡池
大坡池
◆まずは「大坡池」へ

駅前を出発し5分ぐらい走ると大きな池「大坡池」が目に入ってくる。この一帯は湿地となっており、珍しい植物や鳥、動物なども生息しているという。蓮の花が浮かんでいるのも見えた。

田んぼを横目に自転車道を南下。伯朗大道までは標識が至るところに出ているため、迷うことは少ないだろう
田んぼを横目に自転車道を南下。伯朗大道までは標識が至るところに出ているため、迷うことは少ないだろう
◆一面の田んぼ風景

大坡池を通り過ぎると目の前に広がるのは見渡す限りの田んぼ。緑色の稲が広がる景色は絶景。都会の喧騒を忘れさせてくれる。

伯朗大道。カフェチェーン「ミスターブラウンコーヒー」(伯朗[口加][口非])が1997年に同地で撮影したテレビコマーシャルが大きな反響を得たのをきっかけに池上郷公所(役所)によって「伯朗大道」と命名された
伯朗大道。カフェチェーン「ミスターブラウンコーヒー」(伯朗[口加][口非])が1997年に同地で撮影したテレビコマーシャルが大きな反響を得たのをきっかけに池上郷公所(役所)によって「伯朗大道」と命名された
◆メインの伯朗大道

田んぼを横目にしばらく走ると最大の目的地の「伯朗大道」に到着。まっすぐに続く道の両側に田んぼが広がり、人気になるのも納得の美しさ。この日は平日だったにも関わらず、写真撮影やサイクリングを楽しむ観光客が多くみられた。

金城武の木
金城武の木
◆金城武の木

金城武が座った石も。CMに登場した金城がお茶を飲むポースで写真撮影をする人の姿もあった
金城武が座った石も。CMに登場した金城がお茶を飲むポースで写真撮影をする人の姿もあった
伯朗大道に着いても金城武の木まではまだ少し距離がある。金城武の木のそばには観光客の人だかりができているため、近づくとすぐ分かった。この木は実は2014年の台風で一度倒れたのだが、地元住民による保護や日本人樹木医の診察などを受けて見事に復活。現在では元気に葉を茂らせている。

ジョリンの木(左=ジョリン・ツァイ公式フェイスブックより、右=記者撮影)
ジョリンの木(左=ジョリン・ツァイ公式フェイスブックより、右=記者撮影)
◆ジョリンの木も仲間入り

最近は金城武の木の近くに、新たに注目を集めるスポットが誕生している。歌手のジョリン・ツァイ(蔡依林)が同地を旅行で訪れた際に「私たちの木」として紹介した木だ。金城武の木に比べるとまだ知名度は高くないものの、地元の役所はこの「ジョリンの木」が新たな観光名所になるよう期待しているという。

ジョリンの木付近から見た金城武の木(中央)
ジョリンの木付近から見た金城武の木(中央)
ジョリンの木は伯朗大道の脇道にあり、金城武の木からはおよそ200メートルほど。

大水車
大水車
◆水車や大観楼をめぐり再び駅前へ

金城武の木の見物を終えると、あとはひたすら田んぼ道を走り駅前に戻るのみ。途中には大水車や田園風景を一望できる大観楼(展望台)などもあり、一見の価値あり。

池上浮シュウ
池上浮シュウ
自転車道を走っていると、水路が度々目に留まる。注目したいのは、大観楼の下を流れる水路。これは「池上浮シュウ」と呼ばれるかんがい施設で、日本統治時代の1921(大正10)年に開拓民が地元の人々と協力して建造したもの。水路が土堤の上に作られているため「浮シュウ」と名付けられた。全長約1196メートルで、最も高いところでは6メートル近くの高さに敷設されているという。1963年に現在の鉄筋コンクリート造になり、2004年に台東県の歴史建築に登録された。(シュウ=土へんに川)

大観楼から見た風景
大観楼から見た風景
その後田んぼ道を抜けて再び池上の中心部に戻り、サイクリングを終えた。

サイクリング中、見える景色といえば田んぼと遠くに見える山のみ。稲穂の香りもほのかに漂い、大自然を満喫できた。コンクリートジャングルに疲れを感じた時は、池上でのサイクリングで癒やしを感じてみてほしい。

サイクリングコース。記者が走ったのは右側の小さい1周。池上郷観光地図(池上郷公所公式ページhttp://www.cs.gov.tw/pagea.php?Act=page8-1より)
サイクリングコース。記者が走ったのは右側の小さい1周。池上郷観光地図(池上郷公所公式ページhttp://www.cs.gov.tw/pagea.php?Act=page8-1より)
◆池上のサイクリングコース

記者が体験したサイクリングコースは、駅前から出発して大坡池を半周し、金城武の木に続く伯朗大道を通ってから再び駅前に戻ってくるという全長11.5キロの一番短いコース。レンタサイクル店の店員は1時間半から2時間で回れると言っていたが、記者はのんびりと写真を撮ったり休憩したりしながら走ったため、合計3時間を要した。起伏は少ないため比較的ラクに走れるものの、レンタルした自転車が変速機のないいわゆる“ママチャリ”だったため、足への負担を感じた。レンタル店で自転車を選ぶ場合は、変速機付きを選ぶ方が快適にサイクリングを楽しめのではないかと思う。

サイクリングロードの脇には農家の紹介もいたるところに掲示されていた
サイクリングロードの脇には農家の紹介もいたるところに掲示されていた
体力や時間に余裕がある人は、伯朗大道を通り過ぎてからさらに西方面に進み、池上大橋を渡って「池上生態魚梯」や「客家文化園区」などを通過し再び駅前に戻るコース(全長17.4キロ)にチャレンジしてみてもいいだろう。

(名切千絵)

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