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注目の台湾映画:レズビアンの母親と娘の複雑な思い描いた「日常対話」

2017/04/22 18:56
「日常対話」劇中写真(鏡象電影提供)
「日常対話」劇中写真(鏡象電影提供)

同性婚の合憲性をめぐる憲法法廷が開かれるなど、台湾ではLGBT(性的少数者)に関する問題に高い注目が寄せられている。ホアン・ホイチェン(黄恵偵)監督の「日常対話」は、ホアン監督とそのレズビアンである実の母親の関係にスポットを当てたドキュメンタリー映画だ。LGBTの人とその家族の思いを当事者としての視点で描いていく。

母親は自身がレズビアンと知りながらも男性と結婚。しかし、夫からの家庭内暴力(DV)に遭い、2人の娘を連れて家を出た。母親は娘に自分をさらけ出すのが苦手、娘も母の自分に対する愛に疑念を抱いており、一緒に暮らしながらも感情の交流をあまりしてこなかった母娘。2人は撮影を通じて正面から向き合い、遠ざかっていた心の距離を近づけていく。同作では母親の親戚や歴代恋人にも話を聞き、娘の前とは異なる母親の一面も浮き彫りにする。特に母親の性的指向に関して話題が及んだ際の親戚の反応は興味深く、LBGTの人を身内に持つ家族の複雑な心境を観客にかいま見させる。

「日常対話」劇中写真(鏡象電影提供)ホアン監督(右)とその母親(左)が自宅で気持ちを打ち明けるシーンは、カメラを定点に置き、完全に二人きりの状態で撮影されたという。
「日常対話」劇中写真(鏡象電影提供)ホアン監督(右)とその母親(左)が自宅で気持ちを打ち明けるシーンは、カメラを定点に置き、完全に二人きりの状態で撮影されたという。
同作は今年のベルリン国際映画祭で、LGBTを扱う作品を対象にしたテディ賞のドキュメンタリー賞を台湾映画として初めて受賞。昨年のゴールデン・ホース・アワード(金馬奨)ではドキュメンタリー部門の観客賞に選ばれた。1998年から撮影を開始、完成までにかかった期間は18年に及ぶ。また同作にはホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督がエグゼクティブプロデューサーとして参加している。

ホアン監督によれば、母親は当初は「DVを受けた人を撮影して何の意味があるのか」と否定的だったという。ホアン監督は同性愛についてだけでなく、同作品を通じてより多くの人に家族との関係について考えてもらえればと作品に込めた思いを語っている。

(名切千絵)

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