みなさんは金門といえば何を思い浮かべるだろうか。戦地、コーリャン酒、はたまた包丁?どれも金門の名物だが、記者が金門を訪れてみて最も心を奪われたのは、金門のグルメ。海鮮から牛肉、おやつまで何を食べても外れなし。金門の美食を紹介していく。
(1)海鮮
四方を海に囲まれている金門だから当然なのかもしれないが、金門の海鮮は絶品。海鮮の中で最もメジャーなのは「石[虫可]」と呼ばれる小ぶりのカキ。金門ではカキの養殖が行われており、台湾本島でもおなじみのカキオムレツ([虫可]仔煎)からカキ麺線まで、カキを使った料理が豊富にそろう。金門のカキは台湾本島のカキよりさらに小粒だが、その分味わいがギュッと濃縮されており、とても濃厚。カキを主役にしたメニューではこれでもかというほどふんだんにカキが入っており、「しばらくカキはいいかな」と思ってしまうほど。とは言いながらも、カキを使ったメニューに出会う頻度の高さとその美味しさから、記者は結局3日間の滞在中、毎日カキを食べていた。それでも飽きを感じさせないほど美味しかった。
ほかではなかなかお目にかかれない珍しい海鮮もある。「炒佛手」という料理は、「カメノテ」という固着動物の炒め物。これは金門滞在中に食べた料理の中で個人的なナンバーワン。手のような形の固い部分を開いてから、下方の黒い部分に入っている身を食べる。味はアサリをもう少し濃厚にした感じだろうか。おつまみにぴったり。もう一つの珍しいメニューは、ミミズのような形の「沙蟲」(スジホシムシ)という生物の炒め物。こちらは見た目とは裏腹、かなり淡白な味わいで、食感も柔らか。鮮度が命で、漁村でしか食べられないのだという。(2)牛肉金門を旅していると、放牧されている牛を度々目にする。牛肉も金門名物の一つだ。金門の牛は、青草のほか、コーリャン酒の醸造時に出る酒糟を食べて育つのが特徴。特に青草が育たない冬は完全に酒糟のみを飼料としており、金門牛はオーストラリア産や米国産とはまた異なるアミノ酸配列をしているのだという。
金門牛を使ったメニューと言えば牛肉麺。脂身は比較的多めで、甘みがあり、非常に柔らかかった。記者が訪問した店はすっきりとしたスープをかけて、色が変わったら食べるというスタイルで提供。肉そのものの味を堪能できた。ビーフジャーキー(牛肉干)も多く売られている。だが、外国産の牛肉を使用している商品もあるため、金門産にこだわりたい場合は表示をよく確認したほうがいいだろう。
(3)お土産の代表格「貢糖」金門のお土産で欠かせないのは、伝統菓子の「貢糖」。落花生に麦芽糖を混ぜ、細かくなるまで叩いてから再び成型して作られる。かつて島民が朝廷に税を納める際、特産の落花生を「コウ」(ビン南語で、叩いてなめらかにするという意味)してお菓子を作り、地方の役人経由で朝廷に献上したところ、好評を得たため、皇室御用達の逸品になったのだという。(コウ=てへんに貢、ビン=門構えに虫)
味のバリエーションは非常に豊富。記者が立ち寄った店の人気ナンバーワンは「豚足」(猪脚)味。豚足と聞いて驚いたが、本当に豚足が使われているのではなく、ゼラチン状の黒糖でコーティングされており、見た目が豚足に似ているため、その名称が付けられたのだとか。落花生の部分はふんわりと柔らかく、甘さは控えめ。何個でも食べられそうだ。甘いものだけでなく、鮭フレーク入りなど塩気があるフレーバーも。食べる前は果たして合うのか半信半疑だったが、意外にも全く違和感がなかった。スナック菓子のよう。
このほか、小麦粉料理の焼餅、広東粥なども金門のグルメとして有名だ。台湾とも中国大陸とも一味異なるこの地ならではの食べ物が楽しめる金門。美食家にはぜひ足を運んでもらいたい。(名切千絵)