(台北 19日 中央社)台北から台湾桃園国際空港を経由し、桃園市環北までの約51キロを結ぶ桃園メトロ(MRT)空港線が今月2日、ついにプレ開業した。16日からは一般人の試乗が開始されたため、記者も17日に早速鉄道の旅を楽しんできた。
▽直達車は約16分間隔
空港線の台北駅は、台湾鉄路(台鉄)台北駅と台北メトロ(MRT)北門駅の中間に位置し、地下通路で結ばれている。台北駅と桃園空港を結ぶ高速バス、国光客運の乗車場所が台鉄台北駅の東三門にあるのに比べると、台鉄・台北メトロの台北駅・北門駅から5〜10分近く歩く必要があるため、重い荷物を持って移動するのには少々辛いが、天候に左右されないスムーズな移動ができ快適だ。 コンコースで整理券を受け取りホームへ。現在のダイヤは各駅停車の普通車と停車駅の少ない直達車が台北駅を約8分間隔で交互に発車し、いずれも長庚医院駅で緩急接続する。台北駅から空港へ向かう際は、迷わず直達車に乗車すればいい。だた、桃園空港から環北までの区間は普通車だけの運行なのでご注意を。青色の塗装が目印の普通車の座席は横一列に座るロングシート。直達車は紫色が目印。座席は2人がけの固定式クロスシートで、一部は4人が向かい合わせて座るボックスシートになっている。前席の背もたれ部分には折りたたみ式のテーブルが設置されている。
直達車には飲み物を置く場所もあるが、台北や高雄のメトロ同様、駅構内や車内での飲食は法律で禁じられているので、「うっかり」がないようにしたい。肘掛部分には読書灯のスイッチが付いており、車内wifiと組み合わせてちょっとした仕事をすることが可能。クロスシートの間隔は少々窮屈だが、乗車時間を考えると許容範囲か。
▽変化に富んだ風景が楽しめる車窓
列車は地下にある台北駅を出発すると、淡水河を越えたところで地上に出る。大部分がかなり高いところを走る高架区間で、空中散歩している感覚が味わえる。特に有名な観光名所が望めるというわけではないが、これまでとは違う角度で都市から空港へと変化に富んだ景色が見られるのは新鮮だ。
ただ、空港アクセス鉄道としてみると、上野と成田空港を結ぶ京成スカイライナーや香港のエアポートエクスプレスと比較して、スピード感はあまりないのが正直な感想。急カーブが随所にあるほか、台北盆地のへりを越えるため、速度が出せないのは仕方ないことなのだが、「随分ゆっくりと走るな」と感じることが何度かあったほか、記者が乗った直達車は新北市の泰山付近など2カ所で先行列車との間隔調整のため停車したこともあった。 桃園メトロは台北-桃園空港の所要時間を最短35分としているものの、実際には桃園空港第1ターミナルまでで40分近く要し、第2ターミナルへはさらに時間がかかった。車内に取り付けられている液晶画面には速度がリアルタイムで表示され、復路で観察してみると、長庚医院−新北産業園区間では時速94キロを出していた。車両は高速走行ができるのに、線形がそれに制限を加えてしまったのは残念なところ。▽分かりやすさが「ウリ」の空港線 安さを求めるなら高速バスで
とはいうものの、空港線は渋滞による遅延はなく、40分前後で確実に到着するという安心感は大きい。慣れない人には敷居の高い高速バスに比べて、路線や運行状況が把握しやすいというのも魅力だ。満員で次の便を待つ心配もいらない。
ただ、運賃面でみると、空港線が台北−桃園空港160台湾元(約590円)なのに対し国光客運の運賃は125元(約460円)。国光客運は3月から台北と桃園空港を結ぶ路線の減便を発表しているものの、関係筋は「ドル箱路線をみすみす手放すことはしない」と話しているほか、深夜早朝便に搭乗する場合は、引き続き高速バスを利用する必要があるだろう。
高鉄桃園駅では台湾高速鉄路(新幹線)と接続し、中南部からのアクセス改善が図られた。今後は台鉄中レキ駅まで延伸するほか、建設中の台北メトロ環状線が新北産業園区に乗り入れる予定で、空港への利便性がさらに高まるのは確実。(レキ=土へんに歴、木を禾に)林口駅はアウトレットパーク、桃園体育園区駅は桃園国際野球場に近く、高鉄桃園駅には大型水族館も建設される予定。開通で沿線がいっそう活性化することが期待される。今後の発展が楽しみに感じた。正式開業は3月2日。
(齊藤啓介)