◇ 「菜鳥」コンビが助演賞 キャッシュ・チュアン&ジエン・マンシュー
助演男優賞にはキャッシュ・チュアン(荘凱[員力])、助演女優賞にはジエン・マンシュー(簡[女曼]書)が選ばれた。2人はともにチェン・ウェンタン(鄭文堂)監督の「菜鳥」での演技が評価された。
同作は、正義感あふれる新人警官が事件の真相追求と警察にはびこる複雑な暗黙のルールの間で葛藤する姿を描いた作品。ヨウション(宥勝)が主役の新人警官を演じ、キャッシュは退廃的なベテラン警官、マンシューは借金返済に追われる風俗嬢を演じた。キャッシュは受賞スピーチの中で、同作の興行収入が期待通りでなかったことに触れ、「受賞を機に再び作品が公開されれば」と願った。また、「これまで自身を育ててくれたチェン監督にやっとお返しができる」と喜んだ。一方、同作の役作りは非常に難しかったと話したマンシュー。マンシューは清楚なイメージがあるが、同作で演じたのはそれとは正反対の役。観客に役の設定を信じてもらわねばならず、チェン監督やキャッシュには大きく助けられたという。チェン監督は授賞式を欠席しており、「なんで監督は来てないの」と喜びを直接伝えられないのを悔しそうにしていた。◇ 「楼下的房客」は観客賞に観客の評価で選ばれる観客賞にはジョウバーダオの小説をリメイクした「楼下的房客」が選ばれた。同作は性的描写やグロテスクな表現が多用され、これまでの台湾映画とは一線を画す大胆な作品。アダム・ツイ(崔震東)監督は、作品を鑑賞した80過ぎの母親が、その後1週間近く口を聞いてくれなかったというエピソードを明かした。
1軒の古びれた賃貸アパートを舞台に、住人の生活をのぞき見する大家と個性豊かな8人の住人の間に起こる奇妙な物語を通じ、人間の影の一面を生々しく描き出している作品◇ ドキュメンタリー作品賞は「河北台北」リ・ニェンシウ(李念修)監督が、戦後に中国大陸から台湾にやって来た自身の父親の足跡を辿った作品。父親のような背景を持っている人は今では少なくなり、その上、過去の歴史を知らない若者が増えていることに気付いた監督は、「今撮らなければ撮れなくなる」との思いで同作を製作したという。
同作の中心人物となった父親は13年に他界。友人が少ないため、告別式は行わなかった。しかし「作品をいろいろな場所で上映すれば、それは別の形の告別式になるのでは。父も喜ぶと思う」と感慨深げに語った。同作は9月17日から10月7日まで東京都内で開かれる「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー山形in東京2016」で上映予定。
◇ 短編作品賞には「禁止下錨」
移住労働者家庭の孤立した現状を静かかつ明確に描いた作品。映像を通じてツォン・ウェイリャン(曽威量)監督の確かな能力と世界の捉え方が表現され、観客に各国の難民が抱える問題を連想させたことが評価された。
◇ メディアの大きな注目を浴びた「蘋果的滋味」メディア関係者が選ぶメディア推薦賞を獲得したのは、リー・ホイレン(李恵仁)監督のドキュメンタリー「蘋果的滋味」。香港メディアのネクストデジタル(壱伝媒)の台湾進出にスポットを当て、台湾メディア業界に与えた衝撃、台湾における報道の自由の保護について皮肉的に描き出した。
授賞式で「私がいるのが台湾で良かった」と語ったリー監督。なぜなら、作品中には中国大陸では触れてはならないことが描かれているから。授賞式が行われる数日前には、俳優のレオン・ダイ(戴立忍)が中国大陸で「台湾独立派」と叩かれ、出演作を降板させられる出来事があったばかり。それだけに、台湾における「自由」を強調したリー監督には取材陣から大きな関心が集まった。
同作はすでに香港でも上映。香港の観客からは「こんな作品を撮れる台湾が羨ましい」との感想が寄せられたという。監督は「台湾の誇るべきは『自由』。でも、今は外部から本心とは異なる発言を強要されるようになってきた」と現在の情勢を憂いた。
◇ 式典に豪華スター勢ぞろい式にはプレゼンターやノミニーとして豪華な顔ぶれが勢揃い。レッドカーペットに登場した。その一部を紹介する。
(名切千絵)