台湾本島の西側に位置し、大小併せて90の島々からなる澎湖県は、台湾のリゾート地として毎年80~90万人の観光客を集める。人々に愛される理由の一つが、碧く雄大な海と空、この地ならではのユニークな地形や生態系、建築物が織り成す数々の美しい風景なのかもしれない。大自然の悠久の営みによって形成されたダイナミックな絶景もあれば、市街地の一角に佇み、ノスタルジックでほっと一息つける伝統的な景観も。どちらも都会の喧騒で疲れた心を癒してくれるだろう。本篇では、同県の特徴的な景観をいくつか紹介する。(三村知寛)
1. 絶海に臨む「西嶼灯台」18世紀後半に付近を航海する船の目印にと建てられたこの灯台は、最大の島である澎湖本島の西側の島・西嶼の西端に位置。本島から直接車やバイクで行ける最西端の場所でもあるので、ドライブやツーリングの最終地点として適する。灯台周辺の広場は手入れが行き届いており、晴天下では灯台の白色が青々とした芝生に写り映え、夏らしい爽やかな風景を演出。広大な海の眺めも素晴らしく、まるで世界の端に来たかのような感覚にとらわれる。
2. 迫力十分「鯨魚洞」同じく西嶼にある「鯨魚洞」は、長年にわたる季節風や海水の侵蝕作用を受けて、中心にアーチ型の穴があいた巨大な玄武岩(火山岩)。姿が浅瀬に打ち上げられたクジラと似ていることからその名前が付いた。近くで見るとより一層の迫力を感じられる。
3. 不思議なカタチ「大菓葉玄武岩」「柱状節理」と呼ばれる五角形や六角形の柱状の割れ目が無数に入った玄武岩の岩壁は、澎湖の各地で見られる。このタイプの玄武岩は、遥か昔地中の溶岩が地面の隆起によって海底まで出てきて、海水の冷却作用を受け収縮したことで現在の形状になった。ここもかつては海の中だったことがうかがえる。「菓葉」は地名、美しい日の出で有名。
4. ホッと落ち着く「澎湖老街」「澎湖第一街」とも呼ばれるこの老街(古い街並み)は、日本統治時代にはすでに発展を遂げていた。それぞれの店の入口の下には、当時あるいは戦後、その店が何を売っていたか、どういった業種であったかを示すマークが石で刻まれている。現在も喫茶店や洋菓子店、骨董品店、記念品店、民宿などが立ち並び、街は賑わいの中にあって落ち着いた雰囲気を漂わせている。ツーリングや離島への船旅などで疲れたら、お土産探しも兼ねて一息つきに行くのがよいかも。近くには建立から400年以上と伝えられる天后宮も。
5. サボテンパラダイス「青湾仙人掌公園」馬公市の南西部にあるこのパークでは、各国490種余りのサボテンを栽培。一口にサボテンといっても大きさや色、形状などが様々なのがわかる。同公園は今後品種数を少なくとも1800まで増やす予定。さらに珍奇なサボテンに出会えるようになるかも。
6. 海を渡れる?「奎壁山地質公園」本島東部のこの公園は、潮の満ち引きとともに道が海から消えたり出現したりする光景で有名。朝と夕方の干潮時には、海岸と道でつながる海上の島・赤嶼まで歩いて渡ることが可能で、この珍しい自然現象を体験しようと多くの観光客が集まる。
ただ、島に長居しすぎると満潮の時刻がやってきて、戻れなくなるので注意が必要。満潮の前には現地人ガイドによる笛の合図があるので、安全のため速やかに戻ろう。7. エメラルドな恋愛スポット「双心石滬」澎湖諸島最南端に位置する島・七美で見られる。「石滬」とは、浅瀬を岩で丸く囲んだ後、満潮時にそこへ入り込み、干潮で出られなくなった魚を一気に捕獲するという伝統的な漁法。その囲みが二つハート型に重なったロマンチックな景観は、カップルを中心に人気を集める澎湖の代表的スポット。