6月26日から台北市内で開催されていた「第17回台北映画祭」(台北電影節)の閉幕に際し、「台北映画賞」(台北電影奨)の授賞式が18日、台北市の中山堂で行われた。本稿では授賞式レポートの後編をお届けする。
◇ニウ・チェンザー(鈕承沢)監督の「軍中楽園」は2部門獲得
今年のベルリン国際映画祭にも出品された話題作「軍中楽園」は脚本賞(最佳編劇奨)と美術賞(最佳美術設計奨)を受賞。ニウ・チェンザー監督は、脚本賞で名前が呼ばれると、「予想していなかった。何も準備していない」と驚きを隠せない表情を見せ、「これからもずっと良い映画を撮り続けたい」と今後への意欲をあらわにした。
◇貢献賞には俳優で監督のクー・イーチェン(柯一正)貢献賞(卓越貢献奨)に選ばれたクー・イーチェンは、受賞は「非常に大きな精神的な励みとなった」と感慨深い表情を浮かべ、自身の創作スピードはゆっくりだが、今後の作品に期待してほしいと話した。作品の題材は全て生活環境の中から生まれると語るイーチェンは、囲み取材では台湾社会が抱える様々な問題に言及し、意見を述べていた。
◇審査員総評審査員のチェン監督は、授賞式後に取材陣に対して今回のノミネート作品について総評を述べた。今年審査をした台湾映画の印象について聞かれると、悲しく、抑圧的な映画が多かったとした上で、台湾の社会環境が監督にこのような感じを与えてるのだろうかと疑問を投げかける場面もあった。
同じく審査員を務めた中国大陸の女優、ヤオ・チェン(姚晨)は、実は主演男優賞に「念念」や「青田街一号」に出演したチャン・シャオチュアン(張孝全)を推していたことを告白。「青田街一号」については、殺人のプロに殺した相手がお化けとしてまとわりつき、巫女とともに退治に挑むアクションコメディーというこれまでの台湾映画には珍しいタイプの作品であることから、「とても興味深い作品」と評価。チェン監督も高評価を下していたが、他の作品との兼ね合いもあり惜しくも落選となったことを明かし、「仕方ないですね」と漏らした。◇惜しくも受賞を逃した作品授賞式には、受賞こそは逃したものの、ノミネートされていた作品の出演者など豪華メンバーが集結した。ここで一挙に紹介する。
「念念」監督のシルビア・チャン(張艾嘉)やキャストのリー・シンジエ(李心潔)、主題歌を担当したレネ・リウ(劉若英)らが出席。レネは産休から復帰したばかりとあり、メディアからの注目を集めた。かつて主演作「徴婚啓事」で同映画祭の最優秀俳優賞を受賞した経験もあるレネは「家に帰ってきたみたい」と話し、どの映画祭よりも嬉しいと参加の喜びを示した。
「愛琳娜」キャストのタミー・チェン(陳怡蓉)、ロン・シャオホア(龍劭華)、キャッシュ・チュアン(荘凱[員力])らが登場。この賞への参加は初めてというタミーは「緊張する」としながらも「皆が楽しい気持ちで家に帰れれば」と笑顔を見せた。キャッシュは、同作のほか、「菜鳥」や「盧カー」と出演作が3作もノミネート。優秀な制作チームとタッグを組めたことによるとし、「幸運だ」と話した。(カー=上の下にト)
「百日告別」トム・リン(林書宇)監督、キャストのカリーナ・ラム(林嘉欣)、ストーン(石頭)、チャン・シューハオ(張書豪)が出席。同作は監督が妻を亡くしたことをきっかけに作られたもので、劇中では妻や婚約者をそれぞれ事故で失った男女が喪失感に苛まれながらも生きていく姿を描く。7月12日に開催されたプレミアでは上映後、監督やキャストがともに感動で言葉をつまらせる一幕もあった。リン監督は「受賞は期待している。そうすればより多くの人に注目してもらえるから」と本音をのぞかせた一方、1作目ではないので平常心だと冷静な心境をみせた。メイデイ(五月天)のギタリスト、ストーンは同作ではどうすればいつもの自分と違う一面を見せられるか考えて演技していたと話し、今後も演技をする機会が多く得られればと俳優業への意欲を示した。
本稿では紹介できなかったが、フィクション長編作だけでなく、ノミネートされた短編映画やドキュメンタリー映画にも素晴らしい作品はゴロゴロ。短編では作品賞を受賞した「保全員之死」はもちろんのこと、俳優のマット・ウー(呉中天)がメガホンをとった「四十三階」や新人賞を獲得したウェイ・アルセン(イ爾森)が主演した「悄悄」なども心の琴線に触れる良作だった。映画祭や映画賞をきっかけに、より多くの日本の人の目に留まればと切に願う。イ=草かんむりに威(名切千絵)