ツォウ族犠牲者の獄中書簡を書籍化 先住民の移行期の正義を促進/台湾

【社会】 2020/05/28 19:40 文字サイズ: 字級縮小 字級放大
国家人権博物館の陳俊宏館長(左)と高英傑さん

国家人権博物館の陳俊宏館長(左)と高英傑さん

(台北中央社)国民党による権威主義統治下で行われた白色テロの犠牲になった台湾原住民(先住民)ツォウ族の高一生(ウォグ・ヤタウユガナ、日本名矢多一生)が生前獄中で家族に宛てて書いた手紙が1冊の書籍にまとめられ、刊行発表会が28日、台北市の中央社本社で開かれた。出席した高の次男、高英傑(アバイ・ヤタウユガナ)さんは父の死から66年経って書籍化できたことに、「お父さん、やりました」と感慨深げに喜びを語った。

一生は日本統治時代の1908年、阿里山のツォウ族集落に生まれ、1945年に台南県呉鳳郷(現嘉義県阿里山郷)の郷長に就任した。1947年に国民党が市民を弾圧した「2・28事件」が発生すると、高山地区の自治行政に関する構想を提出したことで政府に目をつけられ、1952年に匪諜(中国共産党のスパイ)叛乱と汚職の罪で逮捕され、1954年に処刑された。

書籍「高一生獄中家書」は国家人権博物館が出版した。書籍には、一生が台北市青島東路の拘置所に収容されていた1952年から1954年までの1年7カ月の間に書いた手紙の中で、現存する家族宛ての手紙56通が収録されている。これらの手紙は2013年、英傑さんから同博物館に寄贈されていた。手紙は9通が中国語、47通が日本語で書かれ、日本語のものは英傑さん自身によって中国語に翻訳された。

同博物館の陳俊宏館長は、一生が被害を受けた物語は入り組んでおり、最近になってようやくその経緯と歴史の真相が次第に浮かび上がってきたと説明。台湾原住民族が権威主義統治下で受けた国家暴力の真相がより正しく理解できるようになったとし、原住民族の移行期の正義における最初の1マイルになったと言えると述べた。

(鄭景ブン/編集:名切千絵)