戒厳令下で不審死の青年を連想?大手スーパー中元節CM打ち切りに/台湾

【社会】 2018/08/08 19:46 文字サイズ: 字級縮小 字級放大
戒厳令時代に不審死の青年を連想させる、大手スーパーのCMに登場する男性=ユーチューブより

戒厳令時代に不審死の青年を連想させる、大手スーパーのCMに登場する男性=ユーチューブより

(台北 8日 中央社)大手スーパー、PXマート(全聯福利中心)の中元節のCMに登場する人物が戒厳令時代に不審な死を遂げた青年を連想させるとして議論を巻き起こしている。同社は6日、CMのテレビでの放送打ち切りを発表した。先人をしのぶ気持ちの訴求がコンセプトだとし、歴史的事件や実在の人物を描いたものではないと説明。政治的な意図は全くないとの立場を示している。

台湾で旧暦7月15日の中元節(今年は8月25日)は一年で最も大規模な民俗行事とされ、無縁仏の霊を供養する「普渡」の儀式が街中の至る所で行われる。家や会社の前などには数々のお供え物が並び、人々が線香を上げたり、紙銭を焼いたりする光景が見られる。同社は近年、中元節の時期に合わせ、販促を狙ったCMを打ち出し、工夫が凝らされていると話題を集めていた。

今年のCMでは、日本統治時代に教育を受けた母親や戦後、中国大陸から台湾に渡った高齢男性などが登場。これらの無縁仏が中元節に感謝する様子が描かれた。そのうちの1人として登場したワイシャツ姿の青年が、国民党による政治的弾圧が行われた戒厳令下の1981年に不審死した陳文成氏を連想させるとの声が上がった。外見の特徴が似ていることや、人物の背後に置かれた鏡に陳氏が亡くなった「民国70年」の文字が入っていることなどがインターネット上で相次いで指摘された。

陳文成氏は1950年、現在の新北市林口で生まれた。台湾大学で数学を専攻し、卒業後は米国で博士号を取得。渡米後、台湾の民主化運動に深い関心を示し、反体制派機関誌「美麗島」に寄付を寄せた。1981年、台湾に帰省した際、公安当局に呼び出され、翌日台湾大学で遺体で発見された。陳氏の死に関する真相は未だに明らかにされていない。

陳文成博士紀念基金会の執行長を務める張龍僑氏は7日、CMをめぐる騒ぎについて陳氏の遺族は特にコメントを出していないとした上で、個人的な考えとして、今回の件をきっかけに陳氏の事件に注目する人が増えたと述べ、肯定的な見方を示した。

同社は7日、報道資料を発表し、CMの登場人物について「台湾で育った異なる背景を持った人々を描いた」と説明。本来のコンセプトを理解してもらうため、動画配信サイト「ユーチューブ」で同日、CMを改めて公開した。映像は3日後に削除するとしている。

(郭幸宜、呂欣ケイ、侯姿瑩/編集:楊千慧)