タロコで息子亡くした日本人男性、悲しみ乗り越え台湾再訪 感謝伝える

【社会】 2018/06/22 20:07 文字サイズ: 字級縮小 字級放大
対面会で記念品を交換する白井良一さん(左)と黄柏憲さん

対面会で記念品を交換する白井良一さん(左)と黄柏憲さん

(台北 22日 中央社)昨年9月に東部・花蓮県の落石事故で息子を亡くした日本人男性、白井良一さん(68)が台湾を訪問し、22日、けがをした息子に応急処置をしてくれたにもかかわらず身元が分からなかった台湾人男性と対面した。

白井さんの息子は、花蓮の景勝地、太魯閣(タロコ)国家公園の車道を自転車で走行中に落石にぶつかり、搬送先の病院で亡くなった。遺族が遺骨と共に花蓮を離れる際、地元の自転車愛好家約100人によって駅まで見送られた。白井さんは台湾の人々に感謝し、今年2月に花蓮で地震が発生したときには、息子を治療した地元の病院に20万円を寄付している。

白井さんによると、インターネットなどで公開された写真を見て、救急隊員や医療関係者ではない人が息子を心配して介抱してくれていたことに感動。どうしても会ってお礼を言いたいと、5月の時点で、台湾国際放送(RTI、台北市)に、恩人探しを打診したという。

RTIはメディア関係者や警察の協力を得て、バイクのナンバープレートから、大学院生の黄柏憲さん(25)であることを突き止めた。訪台を予定していた白井さんの日程に合わせ、22日に台北市内で2人の対面会が開催されることになった。顔を合わせた2人は抱擁を交わし、感動した白井さんの目からは涙がこぼれた。

▽2人の対談と記念品交換

黄さんによると、花蓮には台湾一周旅行の途中で立ち寄った。事故当日、バイクで山を降りようとしたところ、人が道端に倒れているのに気付いたが、緊張で頭が真っ白になっていったん通過。その後冷静さを取り戻し、現場に引き返して介護に当たったという。兵役の経験などから応急処置の知識があり、急いで頭を固定して気道を確保し、救急車が来るまで励ましの言葉をかけ続けた。死亡の知らせを耳にしたときには、何もできなかったという自責の念にかられ、涙ぐんだという。

白井さんは、自分だったら血まみれで倒れている人を見たら怖くて逃げ出したくなるだろうと述べ、本来関わりがないのに冷静に対処してくれた黄さんに感謝した。

対談後、2人は記念品を交換した。白井さんが用意した額には、生前の息子の笑顔や、事故当日に息子を介抱している黄さんの姿などの写真とともに、日本と台湾の国旗が並んであしらわれている。また、白井さんのメッセージとして、黄さんへの感謝の言葉とともに、「台湾の人の愛と温かさを心から感じました。これこそ日台友好の証だと思います」と書かれていた。

▽美しく愛がいっぱいの台湾に恩返しをしたい

白井さんは対談後、花蓮に向かった。事故でお世話になった警察、救急隊、病院、宿泊施設、自転車仲間などと再会し、お礼の気持ちを伝えるほか、タロコ国際ヒルクライムの開会式(24日)でのスピーチも予定されている。息子が参加する予定だった同大会は昨年、事故発生を受けて実施が見送られた。スピーチでは、残念な思いをした多くの参加者に応援の言葉を贈るという。

白井さんは、息子が憧れた「美しく愛がいっぱいの台湾」を自分も好きになった、タロコに多くの人が訪れることによって息子も喜ぶと述べ、今後日台関係がさらによくなることを願った。また、台湾への愛を小説などの形式で発表し、日本の人々にタロコの素晴らしさを紹介することで台湾に恩返しをしたいという夢も温めているという。

(塚越西穂)