台湾の総統・立法委員選は「世代交代の選挙」=野嶋剛さん

【政治】 2020/01/14 19:01 文字サイズ: 字級縮小 字級放大
野嶋剛さん

野嶋剛さん

(台北中央社)台湾で対中強硬路線の蔡英文総統が再選を果たし、議会選では与党・民進党が単独過半数を維持した。日本や台湾で活動するジャーナリストの野嶋剛さんは13日、中央社の取材に応じ、蔡総統が掲げる「中華民国台湾」という呼び名が支持されたとの見方を示した。一方、独立派の長老らによる小政党など極端な立場を取る政党には票が集まらず、野嶋さんは「世代交代の選挙といえる」と指摘した。

総統・立法委員(国会議員)選が11日投開票された。蔡総統は800万票を超える過去最多得票を記録し、対中融和路線の最大野党・国民党の韓国瑜高雄市長に圧勝。総統選の投票率は直近3回で最高となる74.90%だった。

野嶋さんは、投票率の高さが意外だったと話し、日本人を最も驚かせたことだと指摘。特に若者の投票率が高かったように思うとの考えを示した。自身の周りでも多くの在日台湾人が選挙に合わせて帰国したという。

台湾には在外選挙制度や事前投票制度がなく、有権者は戸籍地で投票することが求められる。今回の選挙前には投票に合わせて帰省する人が多く見られ、総統選前日の10日、台湾高速鉄道(高鉄、新幹線)の単日利用者数は南下(下り)路線で開業以来最多となる18万604人を記録。海外からの帰郷者も目立ち、日本メディアでも大きく取り上げられた。

野嶋さんは、投票率の高さの要因として香港デモを挙げる。香港の惨状を目の当たりにした台湾人の間では中国に対する警戒感が広がり、「亡国感」という言葉が流行した。

16年の前回選挙時には、人気女性アイドルが中華民国国旗を手にして韓国の番組に出演したことが中国で批判を呼び、謝罪に追い込まれる事件が起きた。この問題が当時、若者の投票を促したとの見方があったが、野嶋さんは事件が選挙直前であったため、前回選挙への影響は大きくなかったと指摘。これに対し、香港デモはすでに半年以上続いており、この間に若者たちが十分に考え、議論し合ったとし、投票のために前もって帰国を計画する若者も多かったとの考えを示した。

若い世代が参政権を得るにつれ、生まれながらにして台湾人アイデンティティーを持つ「天然独」が有権者に占める割合は必然的に大きくなっていくと考える野嶋さん。彼らの支持を得られない政党や立候補者は必然的に淘汰されることになる。

独立か統一かの二択ではなく、現状維持を望むこの若者を中心とした中間層は同性婚などの社会問題にも関心を持っていると野嶋さんは説明。比例区の政党別得票率では二大政党である民進党と国民党は約30%ずつとなり、柯文哲台北市長が立ち上げた新党「台湾民衆党」や14年の学生運動から派生した小政党「時代力量」などに票が流れた。中間層は自身と理念が合致し、共感できる政党に投票する傾向があるとみられるという。

民進党政権が続くことで、中国の圧力は今後も強まると予想されるが、これについて野嶋さんは、台湾は中国からの圧力に「もう慣れたところがある」と話す。選挙前に中国の空母が台湾海峡を通過したが、選挙結果に影響を及ぼさなかったとし、中国からの圧力で外交関係国を失い続けても、民主主義などの理念を共有する他国との実質的な交流を強化することの重要性を指摘した。

国交がなくても交流が活発な日本との関係が最も良い例だとし、米議会でも台湾支持の声が広がっていることにも言及。国際社会で台湾に追い風が吹いているうちに、有利な措置をこれらの国から引き出すことが長期的に見ても台湾のメリットになると話し、民主主義を守り、世界にソフトパワーをアピールしていくことが大事だと語った。

(楊千慧)